決算整理仕訳① 費用・収益の期間帰属【簿記3級 入門講座】

【簿記3級】決算整理仕訳①
はりねずみ

具体的な決算仕訳の内容を解説していきます!

簿記3級の試験範囲の中でも、特に多くの受験生がつまずきやすいのが「決算整理仕訳」です。
決算整理仕訳は、日々の取引を記録した試算表の残高を、正しい期間損益計算や財政状態を表すために修正する手続きです。
簿記の核となる考え方を含んでおり、ここを理解できるかどうかが合否を分けます。

目次

決算整理仕訳の目的と発生主義会計の考え方

日々の取引は、現金が入ってきた、あるいは出ていったタイミングで仕訳をすることが多いかもしれません。
しかし、現代の簿記会計では、単に現金の入出金があった時点で費用や収益を計上するわけではありません。

例えば、商品を掛けで販売した場合、まだ現金を受け取っていなくても、商品を売り上げた時点で売上(収益)を計上します。
これは、商品を引き渡すという「義務」を果たし、代金を受け取る「権利」が確定した段階で収益を認識するという考え方に基づいています。
このような考え方を「発生主義会計」と呼びます。

商品売買のように発生主義で日常的に処理しているものもありますが、家賃や保険料、給料など、多くの費用や収益は、実際にお金を支払ったり受け取ったりしたタイミング(現金主義)で処理しているのが実情です。

決算整理仕訳の主な目的は、期中に行われた現金主義的な処理を、この発生主義の考え方に基づいて修正し、当期に属する収益と費用を正しく計算し、期末時点での資産・負債・純資産の残高を正確に表示することにあります。

今回学ぶ決算整理仕訳の種類

決算整理仕訳は税金に関するものを含めると全部で10種類ありますが、税金に関するものを除くと8種類あります。
この記事では、その中でも特に重要となる以下の4つの基本的な決算整理仕訳について解説します。

  • 現金過不足の処理
  • 当座借越の処理
  • 貯蔵品への振替
  • 収益・費用の期間帰属(前払い・前受け・未収・未払い)

個別論点の理解

まずは、比較的理解しやすいと思われる現金過不足、当座借越、貯蔵品の処理を見ていきましょう。

現金過不足の処理

帳簿上の現金残高と実際にある現金の金額が一致しない場合、その差額を一時的に処理するために「現金過不足」という勘定科目を使用します。

期中に差額が発生した場合
帳簿残高を実際の残高に合わせる仕訳を行います。
実際の現金が帳簿より少なければ、現金(貸方)を減らし、現金過不足(借方)を増やします。
逆の場合は、現金(借方)を増やし、現金過不足(貸方)を増やします。
その後、原因が判明すれば現金過不足勘定を取り消し、正しい勘定科目(例:切手購入漏れなら通信費)で処理します。

決算まで原因が不明な場合
期中に発生した現金過不足で、決算になっても原因が不明な場合は、現金過不足勘定をなくし、雑損または雑益に振り替えます。
借方に現金過不足が残っていれば雑損に、貸方に残っていれば雑益に振り替えます。

決算時に差額が判明した場合
決算時の実地棚卸で差額が判明し、その原因が不明な場合は、期中のように現金過不足勘定を一時的に使うのではなく、直接雑損または雑益で処理します。

当座借越の処理

当座預金で小切手を振り出した結果、当座預金残高がマイナスになることがあります。これは銀行との間で「当座借越契約」を結んでいる場合に可能となります。
期中は、当座預金の残高がマイナスになっても、単純に当座預金勘定(貸方)で処理します。

しかし、決算時に当座預金がマイナス残高になっている場合、それは実質的に銀行からの借入と同じ状態です。
したがって、決算整理仕訳では、マイナスとなっている当座預金残高を、当座借越という負債の勘定科目に振り替える処理を行います。
これにより、期末時点の財政状態を正しく表示します。

貯蔵品の処理

鉛筆や消しゴムといった事務用の消耗品は、金額が小さくすぐに使用されるため、購入時に全額を費用(消耗品費)として処理することが一般的です。

しかし、切手や収入印紙のように、書かれた額面に近い金額で売却できる(換金価値がある)ものは、他の消耗品とは異なり、より厳重に管理されることが多いです。
これらの換金価値のあるものを購入した際は、通常、購入時に全額を費用(通信費や租税公課)として処理します。

決算時に、購入した切手や収入印紙などが未使用のまま残っている場合、その残っている部分はまだ費用になっておらず、資産として計上されるべきと考えます。
したがって、決算整理仕訳では、未使用の残高に対応する金額を費用から取り消し(費用勘定の貸方)、代わりに「貯蔵品」という資産の勘定科目で計上する処理を行います。

この貯蔵品への振替処理は、翌期首に再振替仕訳(逆仕訳)を行う必要があります。

簿記の重要概念!費用・収益の期間帰属

ここからが簿記の学習で非常に重要となる、収益・費用の期間帰属に関する決算整理仕訳です。
これは、前述した発生主義会計の考え方に基づいて、当期に属する収益と費用を正しく認識するための処理です。

前払費用と前受収益

前払費用は、既に代金を支払ったが、そのサービスや恩恵(役務)はまだ受けていない状態を表します。

例えば、来月以降の家賃や保険料を当期中に前払いした場合です。
これは期末日時点で、今後サービスを受けられる「権利」があるため、資産として計上します。

期中に支払った際に全額費用として処理している場合、決算整理では、前払いした(翌期以降に属する)部分を費用から取り消し、前払費用(資産)として振り替えます。

前受収益は、既に代金を受け取ったが、そのサービスや恩恵はまだ与えていない状態を表します。

例えば、来月以降の家賃を当期中に前もって受け取った場合です。
これは期末日時点で、今後サービスを提供する「義務」があるため、負債として計上します。

期中に受け取った際に全額収益として処理している場合、決算整理では、前もって受け取った(翌期以降に属する)部分を収益から取り消し、前受収益(負債)として振り替えます。

未払費用と未収収益

未払費用は、費用は既に発生しているが、まだ代金を支払っていない状態を表します。

例えば、当期に発生した水道光熱費や給料、あるいは当期末の家賃で、まだ支払期日が来ていない、または支払いを滞納している場合などです。
これは期末日時点で、代金を支払う「義務」があるため、負債として計上します。

期中にまだ支払っていないため費用として計上していない場合、決算整理では、当期に発生した未払い分を費用として計上し、未払費用(負債)として振り替えます。

未収収益は、収益は既に発生しているが、まだ代金を受け取っていない状態を表します。

例えば、当期末の家賃や、当期に期間が経過した受取利息で、まだ受け取っていない場合などです。
これは期末日時点で、代金を受け取る「権利」があるため、資産として計上します。

期中にまだ受け取っていないため収益として計上していない場合、決算整理では、当期に発生した未収分を収益として計上し、未収収益(資産)として振り替えます。

これらの前払い・前受け・未収・未払いの決算整理仕訳も、原則として翌期首に再振替仕訳(逆仕訳)が必要です。

再振替仕訳の必要性

前払い・前受け・未収・未払いの決算整理仕訳は、あくまで決算時点での当期の収益・費用、および期末時点の資産・負債を正しく表示するために行う修正仕訳です。
これらの仕訳を行ったまま翌期に入ると、翌期の記帳が煩雑になったり、正確な期間損益計算ができなくなったりします。

そのため、決算整理仕訳のうち、翌期以降の取引に関連するものを翌期首に逆仕訳することで、帳簿を期首の状態に戻し、翌期の日常的な取引をスムーズに記録できるようにします。
なぜ再振替仕訳が必要なのか、その理論的な理由は別途学習することで、決算整理仕訳への理解がさらに深まります。

まとめ

決算整理仕訳の学習は、初めて触れる考え方(発生主義)が多く、難しく感じやすいポイントです。
特に前払い・前受け・未収・未払いの4パターンは混同しやすく、理解に時間がかかることがあります。

しかし、これらの決算整理仕訳は、簿記の基本的な考え方であり、簿記2級以降の学習にも必須の知識となります。
最も大切なのは、それぞれの仕訳がどのような状態を表しており、なぜその仕訳が必要なのか(なぜ資産・負債になるのか)を理解することです。

解説を繰り返し読んだり聞いたりするだけでなく26、実際に様々な練習問題を解いてみて、仕訳の手順と意味を体で覚えることが重要です。
最初は難しくても、繰り返し取り組むことで必ず理解が深まります。
1つずつ確実にマスターして、簿記3級合格を目指しましょう!

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