
具体的な決算仕訳の内容を解説していきます!
簿記3級の独学での合格を目指す皆さん、こんにちは!
簿記の学習において、決算整理仕訳は非常に重要なパートです。
特に商品売買に関する処理や、最終的な利益の確定は、簿記の仕組みを理解する上で避けて通れません。
この記事では、簿記3級の独算整理仕訳の中から、特に重要なポイントを絞って解説していきます。
簿記3級 決算整理仕訳のキホン – なぜ必要?
簿記の学習の大きな目的の一つは、会社の儲け、つまり利益を正確に計算することです。
利益は、一般的に収益から費用を差し引いて求められます。
これを会計期間の最後に行う手続きが決算整理仕訳です。
利益計算の考え方
利益を計算する際に、商品売買から得た利益をまず把握することが重要視されます。
商品売買で得た収益である売上高から、商品売買にかかった費用、つまり売上原価を差し引いて計算されるのが売上総利益です。
この売上総利益を求めた上で、人件費や交通費などのその他の費用を差し引き、受取利息や受取配当金などのそのほかの収益を足し引きして、最終的な当期純利益を算定します。
三分法と売上原価の課題
商品売買の取引を記録する方法として、簿記3級では分記法と三分法を学習します。
商品売買で得た利益(売上総利益)を把握したいと考えた場合、分記法であれば「商品売買益」という勘定科目を見ることで、期中に既に利益が算出されているため把握できます。
しかし、三分法の場合は、売上高は「売上」勘定を見れば分かりますが、「売上原価」は直接的に分かる勘定科目がありません。
期中に仕入れた商品の金額は「仕入」勘定に記録されますが、これはあくまで当期に仕入れた合計額であり、必ずしも当期に売れた商品の原価の合計額ではありません。
期首に在庫があったり、期末に在庫が残ったりするため、仕入れた商品が100%売れるとは限らないのです。
そのため、三分法を採用している場合は、決算整理仕訳によって売上原価を算定する必要があります。
売上原価の算定をマスター!「しーくりくりしー」の仕訳
三分法における売上原価の算定は、決算整理仕訳によって行われます。
この仕訳は非常に重要で、覚えやすい呪文のようなものがあります。
売上原価の定義と計算式
まず、売上原価とは「売れた商品の原価」のことです。
仕入れた商品の原価ではない点に注意が必要です。
例えば、100万円で仕入れた商品を120万円で3つ売り上げた場合、売上原価は
100万円 × 3個 = 300万円
となります。
この計算には、在庫があるかないかは関係ありません。
売上原価を計算するための考え方は、以下のシンプルな算数のような式で表すことができます。
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高
これは、「もともとあった在庫」に「当期に仕入れた分」を足し、そこから「期末に残った在庫」を引けば、「当期に売れた分」がわかる、という意味です。
仕訳の手順と金額
三分法でこの売上原価を算定するための決算整理仕訳は、以下の二つの仕訳で行われます。
この仕訳は「しーくりくりしー」と呼ばれ、非常に重要です。
仕入 〇〇 / 繰越商品 〇〇 (通称「しーくり」)
この仕訳の金額には、期首商品棚卸高(前期末の商品棚卸高と同じ金額)を入れます。
期首商品棚卸高が100万円の場合、
借方 | 貸方 | ||
仕入 | 1,000,000 | 繰越商品 | 1,000,000 |
繰越商品 〇〇 / 仕入 〇〇 (通称「くりしー」)
この仕訳の金額には、期末商品棚卸高を入れます。
期末商品棚卸高が200万円の場合、
借方 | 貸方 | ||
繰越商品 | 2,000,000 | 仕入 | 2,000,000 |
この「しーくりくりしー」の2つの仕訳を行うことで、「仕入」勘定の残高が売上原価と同じ金額になり、「繰越商品」勘定の残高が期末商品棚卸高と同じ金額になります。
期中に仕入れた金額だけが計上されていた「仕入」勘定は、この仕訳によって期首棚卸高が加算され(「しーくり」)、期末棚卸高が差し引かれ(「くりしー」)、結果として売上原価の金額を示す残高になるのです。
一方、「繰越商品」勘定は、期中には仕訳が行われず、通常は前期末の在庫金額(当期首の在庫金額)が残高として引き継がれています。
決算整理の「しーくり」の仕訳で期首棚卸高が貸方に計上されることで、繰越商品勘定の期首残高がゼロクリアされます。
そして、「くりしー」の仕訳で期末商品棚卸高が借方に計上されることで、改めて期末の商品棚卸高が残高として計上される仕組みになっています。
このように、「しーくりくりしー」は単に覚えるだけでなく、その仕訳が売上原価の計算式に基づいていること、そして仕入勘定と繰越商品勘定の残高を適切に調整する役割を持っていることを理解すると、より深く簿記の仕組みを学ぶことができます。
これで利益が確定!損益振替の仕訳
すべての決算整理仕訳(減価償却費や未収未払などの計上、そして上記の商品売買に関する仕訳など)が終わった後、最後に利益を確定させるための決算整理仕訳が行われます。
これは「損益振替」と呼ばれます。
収益・費用勘定の締め切り
損益振替の仕訳では、まず収益に属するすべての勘定科目(売上、受取利息、受取配当金など)の残高を「損益」という勘定科目にまとめます。
これにより、収益の各勘定科目の残高はゼロになります。
次に、費用に属するすべての勘定科目(仕入、給料、旅費交通費など、ただし「仕入」勘定は「しーくりくりしー」の仕訳によって売上原価の金額になっています)の残高も「損益」勘定にまとめます。
これにより、費用の各勘定科目の残高もゼロになります。
当期純利益の確定と振替
収益と費用のすべての残高が集約された「損益」勘定は、その差額が当期純利益(または損失)を示します。
収益の合計が費用の合計より大きい場合、損益勘定は貸方に残高が生じ、これが利益の金額となります。
この確定した利益の金額は、最終的に純資産の部に属する「繰越利益剰余金」という勘定科目に振り替えられます。
これにより、損益勘定の残高もゼロになり、次期首はすべての収益・費用勘定の残高がゼロの状態からスタートすることになります。
一方、繰越利益剰余金のような貸借対照表に載る勘定科目は、前期末の残高がそのまま当期首に引き継がれ、当期末の残高が翌期首に引き継がれる「ストック」の概念を持ちます。
当期に生じた利益がこの繰越利益剰余金に加算されることで、会社の純資産が増加したことが示されます。
まとめ:決算整理仕訳で簿記の理解を深めよう
簿記3級の決算整理仕訳、特に商品売買に関する「しーくりくりしー」の仕訳と、利益を確定させる損益振替の仕訳は、簿記のサイクルを理解する上で非常に重要です。
「しーくりくりしー」は、三分法における売上原価の算定という具体的な課題を解決するための仕訳であり、その背景には売上原価の計算式や、勘定科目の残高を調整する仕組みがあります。
また、損益振替は、会計期間の収益と費用を集計し、最終的な経営成績(当期純利益)を確定させて次期に引き継ぐ手続きです。
これらの仕訳の意味や目的をしっかりと理解することで、単なる暗記ではなく、簿記の全体像が見えてくるはずです。
独学での学習は大変なこともあると思いますが、練習問題を繰り返し解きながら、1つずつ理解を深めていきましょう。
簿記3級合格に向けて、頑張ってください!