小口現金とは？定額資金前渡法（インプレスト・システム）の具体例な仕訳処理を徹底解説！【簿記3級 入門講座】

小口現金とは？

小口現金とは、企業の日常的な少額の支払いに対応するために用意された現金のことを指します。

会社の経理部では日々様々なお金のやり取りが発生します。
得意先からの集金や、従業員への立替経費の精算など、入金も出金もありますね。
特に、少額かつ頻繁に発生する支払い（例えば切手代や近距離の交通費など）は、その都度経理部の担当者（出納係）が現金を手渡しして仕訳を行うとなると、非常に手間がかかります。

そこで考えられたのが、経理部以外に現金管理の担当者を置き、少額の支払いはその担当者に任せるという方法です。
この担当者は「用度係（ようどがかり）」と呼ばれます。
あらかじめ経理部から用度係にまとまった現金を渡しておき、用度係はその現金を使って日々の少額支払いを処理します。

この「日々の少額支払いのために、経理部以外の場所にあらかじめ置かれているまとまった現金」のことを小口現金と呼びます。
一方、経理部の金庫に保管されている現金は、会計上は単に「現金」として扱われます。
小口現金は、経理部が管理する「現金」とは区別される勘定科目として処理されるのです。

定額資金前渡法（インプレスト・システム）とは？

定額資金前渡法（インプレスト・システム）とは、小口現金の管理方法の一つであり、一定の金額を前渡しし、その範囲内で支出を行う方法です。

これは、名前よりも仕組みを理解することが重要です。
インプレストシステムの流れは以下の通りです。

小口現金を渡すとき（設定時）の仕訳

このとき、経理部の手元にあった現金が減ります。
そして、新しく小口現金という形で現金が別の場所に移ったと考えます。

まず、経理部の出納係が用度係に小口現金を渡すときの仕訳です。
例えば、10万円を渡したとします。

定額資金前渡法（インプレスト・システム）により、会計係が小口係に小口現金¥100,000を現金で前渡しした。

借方		貸方
小口現金	100,000	現金	100,000

このように、「小口現金」という勘定科目が借方に計上され増加します。
これは、小口現金という資産が増えたと考えるためです。
一方、経理部の「現金」という資産が貸方に計上されて減少します。

支払いの報告を受けたときの仕訳

用度係が支払いを行った時点では、経理部はその事実を知らないため、仕訳は行われません。
報告を受けたあと、経理部がまとめて仕訳を行います。

次に、用度係が小口現金を使って支払いを行い、経理部に報告したときの仕訳です。
例えば、ある週に切手代3,000円と電車賃2,000円を支払ったと報告があったとします。

用度係より、切手代3,000円と電車賃2,000円を支払ったと報告を受けた。

簿記上、切手代は「通信費」・電車賃は「旅費交通費」という費用で処理します。

借方		貸方
通信費 旅費交通費	3,000 2,000	小口現金	5,000

報告された支払いは、会社にとっての費用となります。
費用が発生したときは、借方に計上します。
一方、支払いは小口現金から行われたため、小口現金という資産が減少します。
資産の減少は貸方です。

このように、支払いの内容に応じて「通信費」や「旅費交通費」といった費用勘定を借方に計上し、合計金額（3,000円 + 2,000円 = 5,000円）を「小口現金」勘定の貸方に計上して減少させます。

小口現金を補充したときの仕訳

週の終わりに用度係が経理部に報告を行い、使用した金額（上記の例では5,000円）が確定したら、経理部はその金額を用度係に渡して小口現金を最初の設定額に戻します。

借方		貸方
小口現金	5,000	現金	5,000

この仕訳により、小口現金勘定は先ほど減少した5,000円分が増加して、元の残高（例では10万円）に戻ることになりますね。
一方、経理部の「現金」が減少します。

これで、また新しい週の始まりに用度係は10万円の小口現金を手元に持っている状態となり、再び日々の支払いに使用できます。