
手形が絡む仕訳について、勉強しましょう。
これ以外にも、日商簿記3級に独学合格を目指す方のための解説記事を多数掲載しています。
ぜひ、あわせてご確認ください。


手形とは?
簿記3級で取り扱うのは、約束手形
簿記3級で主に学習するのは、「約束手形」です。
約束手形は、商品などを購入した側(振出人)が販売した側(受取人)に対し、
「○月○日に△△円支払います」
と約束するものです。
これは2社間の取引で使われます。
ちなみに、手形にはほかに「為替手形」というものもありますが、これは3社間で使われるもので、簿記3級では扱いません。
手形を受け取った側は、その手形を期日が来た時に銀行に持ち込んで現金化を依頼します。
この手続きを「取立依頼」といいます。
小切手との違いと実社会での使われ方
小切手は銀行に持ち込めばすぐに現金を受け取れますが、手形の場合は手形に書かれた期日まで待たないと現金化できません。
この期日は、通常の場合、手形を振り出した日から数ヶ月後(例えば4ヶ月後)であることが多いです。
つまり、代金回収までに時間がかかるのが手形の特徴です。
また、手形の発行や受け取りには、収入印紙を貼る必要があるなどの手間もかかります。
実社会での手形の使われ方は、簿記の学習でまず出てくるケースとは少し異なる場合があります。
簿記の教科書では、商品売買と同時に手形を振り出す(受け取る)ケースを学ぶことが多いですが、実務ではまず通常の掛取引(売掛金・買掛金)を行い、その決済時に現金ではなく手形を使う(これを「手形に切り替える」と言う)ことも多いようです。
この場合、既に発生している買掛金が「支払手形」に、売掛金が「受取手形」に勘定科目が変わるという処理になります。
商品を仕入れたときの仕訳(手形を振り出した側)
A社がB社から商品¥100,000を仕入れ、代金を手形で支払った。
A社は商品を受け取ったので「仕入」という費用が発生します。
代金は手形という形で支払う約束をしたため、将来支払う義務(負債)が発生します。
このときの勘定科目は、「支払手形」を使います。
支払手形は、買掛金と同じ負債ですが、手形という具体的な証書がある点が異なります。
借方 | 貸方 | ||
仕入 | 100,000 | 支払手形 | 100,000 |
「仕入」は、費用の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「支払手形」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




手形を振り出した側は、受け取った側が銀行に取立依頼を出すことに直接関与しないため、この時点では特別な仕訳はありません。
商品を販売したときの仕訳(手形を受け取った側)
B社がA社から商品¥100,000を販売し、代金をA社振出の手形で受け取った。
B社は商品を販売したので「売上」という収益が発生します。
代金は手形として受け取ったため、将来現金を受け取る権利(資産)が発生します。
このときの勘定科目は「受取手形」を使います。
受取手形は、売掛金と同じ資産ですが、手形という具体的な証書がある点が異なります。
手形を受け取ったB社のような側を「受取人」と呼びます。
借方 | 貸方 | ||
受取手形 | 100,000 | 売上 | 100,000 |
「受取手形」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「売上」は、収益の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




B社は受け取った手形を銀行に持ち込み、期日になったらお金を受け取れるように「取立依頼」をします。
取立依頼自体は、仕訳の対象ではありません。
手形が決済されたときの仕訳
商品を仕入れた側(手形を振り出した側)の仕訳
借方 | 貸方 | ||
仕入 | 100,000 | 支払手形 | 100,000 |
▼ ▼ ▼
借方 | 貸方 | ||
支払手形 | 100,000 | 当座預金 | 100,000 |
「支払手形」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションの反対側である借方(左側)に記入します。




「当座預金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションと反対側である貸方(右側)に記入します。




商品を販売した側(手形を受け取った側)の仕訳
借方 | 貸方 | ||
受取手形 | 100,000 | 売上 | 100,000 |
▼ ▼ ▼
借方 | 貸方 | ||
当座預金 | 100,000 | 受取手形 | 100,000 |
「当座預金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「受取手形」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションと反対側である貸方(右側)に記入します。



