個別原価計算の基礎と仕訳を図解で徹底解説!【簿記2級 工業簿記】

【2級 工業簿記】個別原価計算とは?
はりねずみ

個別原価計算について、基礎から解説していきます!

目次

個別原価計算とは?

\ ここがポイント!/

原価を製造指図書別に計算することを「個別原価計算」といいます。

そもそも、原価って何だったっけ…?

「原価」とは、製品を製造するために支払った費用のことです。

広告代
営業を担当する従業員の給料

などの「販売費」

本社建物の減価償却費

などの会社を管理・運営するためにかかった「一般管理費」なども含まれます。

製品の製造にかかった金額の総額が「製造原価」です。

なお、この製造原価に

  • 販売費
  • 一般管理費

を含めた金額を「総原価」といいます。

製造原価を分類すると…

製造原価は、何を使って製品を作ったかの観点から、
 ■ 材料費
 ■ 労務費
 ■ 経費
に分類することができます。

木製の家具をつくっている会社を例に、それぞれを見てみましょう。

材料費とは?

木材やネジ・接着剤などの材料にあたるものが「材料費」です。

労務費とは?

板を切ったりパーツを組み合わせたりして家具を作る人の賃金・給料にあたるものが「労務費」です。

経費とは?

工場や事務所の家賃・電気代などの材料費・労務費以外にかかる費用が「経費」です。

個別原価計算とは?

原価を製造指図書別に計算することを「個別原価計算」といいます。

ここからがこの記事のメインテーマです。

お客さんの注文に応じて、注文されたとおりの製品を製造する生産形態を「受注生産形態」といいます。
受注生産形態の製造業では、お客さんから注文を受けると、その内容を記載した「製造指図書(せいぞうさしずしょ)」を作成します。

工場では、この製造指図書をもとに製造を進めていきます。

お客さんA → ローテーブルを注文
お客さんB → ダイニングテーブルを注文
お客さんC → 学習机を注文  

という場合であれば、

  • ローテーブル
  • ダイニングテーブル
  • 学習机

の3つの製造指図書があり、それぞれについて製造していきます。

【個別原価計算とは?】製造指図書

受注生産形態においては、発行された製造指図書ごとにかかった原価を「原価計算表」で集計して、製造原価を計算します。
これが「個別原価計算」です。

製造直接費は、どう処理する?

そもそも、製造直接費って何だっけ?

製造原価は、製品ごとにいくらかかったかが明らかかどうかの観点から、
 ■ 製造直接費
 ■ 製造間接費
に分類することができます。

木製の家具をつくっている会社を例に、それぞれを見てみましょう。

製造直接費とは?

家具をつくるのに使った木材代のように、製品をつくるのにいくらかかったのかを把握できるものを「製造直接費」といいます。

何をつくって製品をつくったかの観点の分類である

  • 材料費
  • 労務費
  • 経費

と組み合わせて、

  • 直接材料費
  • 直接労務費
  • 直接経費

に分類することができます。

製造間接費とは?

電気代や水道費などは、その製品をつくるとき以外にも使用していますね。
このように、製品をつくるのにいくらかかったのかを把握できないものを「製造間接費」といいます。

何をつくって製品をつくったかの観点の分類である

  • 材料費
  • 労務費
  • 経費

と組み合わせて、

  • 間接材料費
  • 間接労務費
  • 間接経費

に分類することができます。

製造直接費の賦課

原価のうち、直接材料費・直接労務費・直接経費といった製造直接費は、どの製品にいくら使ったのかが明らかですね。
これを製造指図書ごとに集計することを「賦課(ふか)」といいます。

【製造指図書No.1(ローテーブル)】

直接材料費300
直接労務費200
直接経費100

【製造指図書No.2(ダイニングテーブル)】

直接材料費600
直接労務費400
直接経費200

のように明らかになっているのであれば、原価計算表には、

原価計算表
単位(円)

費目No.1No.2合計
直接材料費300600900
直接労務費200400600
直接経費100200300

のように記入します。

製造間接費は、どう処理する?

製造間接費は、どの製品にいくらかかったのかが明らかではありません。
そのため、何らかの基準を設けて、それにもとづいて各製造指図書に振り分ける必要があります
この振り分ける作業を「配賦(はいふ)」・振り分けるときの基準を「配賦基準」といいます。

配賦基準を直接作業時間としている場合であれば、実際の作業時間の合計値が配賦基準です。

配賦率とは?

製造間接費をそれぞれの製造指図書に配賦するには、製造間接費の実際発生額を配賦基準合計で割って、「配賦率」を求める必要があります。

【個別原価計算とは?】製造間接費配賦率の求め方

製造間接費の実際発生額が5,000円で、

【製造指図書No.1(ローテーブル)】
直接作業時間:25時間

【製造指図書No.2(ダイニングテーブル)】
直接作業時間:15時間

であれば、

25時間 + 15時間 = 40時間
5,000円 ÷ 40時間 = @125円

ですね。

この@125円が製造間接費の配賦率です。
これをそれぞれの製造指図書の直接作業時間にかけた、

【製造指図書No.1(ローテーブル)】
@125円 × 25時間 = 3,125円

【製造指図書No.2(ダイニングテーブル)】
@125円 × 15時間 = 1,875円

が製造間接費です。

原価計算表には、

原価計算表
単位(円)

費目No.1No.2合計
前月繰越1,0002,0003,000
直接材料費300600900
直接労務費200400600
直接経費100200300
製造間接費3,1251,8755,000
合計4,7255,0759,800

のように、記入します。

製品が完成して引き渡したときは、どう処理する?

備考欄への記入

月末時点で、製品が完成して引き渡しが終わっているのであれば備考欄に「完成・引渡済」・完成していないのであれば「未完成」と記入します。
完成して引き渡しが終わっていない場合は、「完成・未引渡」です。

原価計算表
単位(円)

費目No.1No.2No.3合計
前月繰越1,0002,0003,0006,000
直接材料費3006009001,800
直接労務費2004006001,200
直接経費100200300600
製造間接費3,1251,8752,0007,000
合計4,7255,0756,80016,600
備考完成・引渡済完成・未引渡未完成

勘定の振替

完成した製品の振替

製品が完成したら、その製品の原価を仕掛品勘定から製品勘定に振り替えます。

原価計算表
単位(円)

費目No.1No.2No.3合計
前月繰越1,0002,0003,0006,000
直接材料費3006009001,800
直接労務費2004006001,200
直接経費100200300600
製造間接費3,1251,8752,0007,000
合計4,7255,0756,80016,600
備考完成・引渡済完成・未引渡未完成
【個別原価計算とは?】仕掛品勘定

借方には、原価計算表のNo.1~3の合計の列を記入します。

製品が完成しているNo.1・2は、合計金額を仕掛品勘定から製品勘定に振り替えます。
また、製品が完成していないNo.3は、次月繰越として処理します。

引き渡した製品の振替

完成した製品を引き渡したら、その製品の原価を売上原価勘定に振り替えます。

原価計算表
単位(円)

費目No.1No.2No.3合計
前月繰越1,0002,0003,0006,000
直接材料費3006009001,800
直接労務費2004006001,200
直接経費100200300600
製造間接費3,1251,8752,0007,000
合計4,7255,0756,80016,600
備考完成・引渡済完成・未引渡未完成
【個別原価計算とは?】製品原価勘定
【個別原価計算とは?】売上原価勘定

完成した製品No.1・2のうち、製品を引き渡したNo.1を売上原価勘定に振り替えます。
また、完成したものの製品を引き渡していないNo.2を次月繰越として処理します。

予定配賦率を用いるときは、どう処理する?

配賦率って、何だったっけ…?

製造間接費をそれぞれの製造指図書に配賦するには、製造間接費の実際発生額を配賦基準合計で割って、「配賦率」を求める必要があります。

製造間接費の実際発生額が5,000円で、

【製造指図書No.1(ローテーブル)】
直接作業時間:25時間

【製造指図書No.2(ダイニングテーブル)】
直接作業時間:15時間

であれば、

25時間 + 15時間 = 40時間
5,000円 ÷ 40時間 = @125円

ですね。

この@125円が製造間接費の配賦率です。
これをそれぞれの製造指図書の直接作業時間にかけた、

【製造指図書No.1(ローテーブル)】
@125円 × 25時間 = 3,125円

【製造指図書No.2(ダイニングテーブル)】
@125円 × 15時間 = 1,875円

が製造間接費です。

このように、製造間接費の実際発生額を配賦することを「実際配賦」といいます。
この実際配賦の弱みは、月末時点で製造間接費の実際発生額が計算されるまで配賦の計算ができないことです。
実際発生額は毎月変動するので、「同じ製品なのに、月によって配賦額が違う…」という欠点もあります。

予定配賦とは?

実際配賦の代わりに、あらかじめ決めておいた配賦率を用いて、製造間接費を計算する方法があります。
これが「予定配賦」です。
予定配賦に用いる配賦率を「予定配賦率」といいます。

製造間接費を予定配賦するためには、期首の時点で1年間の予定額を見積もります。
これが「製造間接費予定額」です。

また、「基準操業度」という数値も必要になります。
配賦基準を直接作業時間としている場合であれば、1年間に予定されている直接作業時間の合計値が基準操業度です。

予定配賦率は、製造間接費予定額を基準操業度で割ることで求められます。

【個別原価計算とは?】予定配賦率の求め方

当期の年間製造間接費の予算額が50,000円で、基準操業度(直接作業時間)が500時間の場合であれば、

50,000円 ÷ 500時間 = @500円

が予定配賦率ですね。

【製造指図書No.1(ローテーブル)】
直接作業時間:25時間

【製造指図書No.2(ダイニングテーブル)】
直接作業時間:15時間

であれば、

【製造指図書No.1(ローテーブル)】
@500円 × 25時間 = 12,500円

【製造指図書No.2(ダイニングテーブル)】
@500円 × 15時間 = 7,500円

が予定配賦額です。

仕訳は、

借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
仕掛品20,000製造間接費20,000

です。
製造間接費として、No.1・2の合計額を計上します。

予定配賦率を用いたときに、月末の処理はどうなる?

製造間接費を予定配賦しているときには、予定配賦額と実際発生額に差額が発生します。
月末時点で、この差額を「製造間接費配賦差異」として、製造間接費勘定から製造間接費配賦差異勘定に振り替えます。

予定配賦額が3,000円・実際発生額が2,000円の場合は、差額である製造間接費配賦差異が

3,000円 – 2,000円 = 1,000円

ですね。

予定額よりも実際の額が少なかったため、足は出ていません。
この場合は、予定配賦額 > 実際発生額なので、有利差異です。

仕訳は、

借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
製造間接費1,000製造間接費配賦差異1,000

となります。

また、予定配賦額が3,000円・実際発生額が3,500円の場合は、差額である製造間接費配賦差異が

3,000円 – 3,500円 = ▲500円

ですね。

予定額よりも実際の額が多かったため、足が出ています。
この場合は、予定配賦額 < 実際発生額なので、不利差異です。

仕訳は、

借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
製造間接費配賦差異1,500製造間接費500

となります。

予定配賦率を用いたときに、会計年度末の処理はどうなる?

製造間接費を予定配賦しているときには、予定配賦額と実際発生額に差額が発生します。
月末ごとに計上された製造間接費配賦差異は、会計年度末(決算日)に売上原価勘定に振り替えます。

借方に計上している製造間接費配賦差異が10,000円であれば、仕訳は、

借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
売上原価10,000製造間接費配賦差異10,000

です。

最後に

はりねずみ

いかがでしたか…?

小難しい用語がいくつか出てきましたが、漢字の意味そのままなので、そこまで身構える必要はありません。

「個別原価計算」は、このあとに続いていく原価計算の基礎となる部分です。
丸暗記してしまうレベルまで読み込んで、得意分野にしていきましょう!


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