組別総合原価計算の基礎と仕訳を図解で徹底解説！【簿記2級 工業簿記】

組別総合原価計算とは？

＼ ここがポイント！／

オーダーメイドによる受注生産形態とは違い、毎月同じ製品を大量生産するのであれば、1か月で完成した製品の原価をまとめて計算し、それを完成品の数量で割って、製品１個当たりの原価を計算することができます。
このように、同じ製品を毎月精算する場合に使われる計算手続きが「総合原価計算」です。

今回は、同じ製造ラインで種類が異なる製品を大量生産する場合の「組別総合原価計算」について解説してきます。

そもそも、原価って何だったっけ…？

「原価」とは、製品を製造するために支払った費用のことです。

広告代
営業を担当する従業員の給料

などの「販売費」や

本社建物の減価償却費

などの会社を管理・運営するためにかかった「一般管理費」なども含まれます。

製品の製造にかかった金額の総額が「製造原価」です。

なお、この製造原価に

• 販売費
• 一般管理費

を含めた金額を「総原価」といいます。

製造原価を分類すると…

何を使って製品を作ったかの観点による分類

製造原価は、何を使って製品を作ったかの観点から、
　■ 材料費
　■ 労務費
　■ 経費
に分類することができます。

木製の家具をつくっている会社を例に、それぞれを見てみましょう。

材料費とは？

木材やネジ・接着剤などの材料にあたるものが「材料費」です。

労務費とは？

板を切ったりパーツを組み合わせたりして家具を作る人の賃金・給料にあたるものが「労務費」です。

経費とは？

工場や事務所の家賃・電気代などの材料費・労務費以外にかかる費用が「経費」です。

製品ごとにいくらかかったのかが明らかかどうかの観点による分類

製造原価は、製品ごとにいくらかかったかが明らかかどうかの観点から、
　■ 製造直接費
　■ 製造間接費
に分類することができます。

木製の家具をつくっている会社を例に、それぞれを見てみましょう。

製造直接費とは？

家具をつくるのに使った木材代のように、製品をつくるのにいくらかかったのかを把握できるものを「製造直接費」といいます。

何をつくって製品をつくったかの観点の分類である

• 材料費
• 労務費
• 経費

と組み合わせて、

• 直接材料費
• 直接労務費
• 直接経費

に分類することができます。

製造間接費とは？

電気代や水道費などは、その製品をつくるとき以外にも使用していますね。
このように、製品をつくるのにいくらかかったのかを把握できないものを「製造間接費」といいます。

何をつくって製品をつくったかの観点の分類である

• 材料費
• 労務費
• 経費

と組み合わせて、

• 間接材料費
• 間接労務費
• 間接経費

に分類することができます。

組別総合原価計算とは？

同じ製造ラインでダイニングテーブルとローテーブルを作っている…のように、同じ生産ラインで種類が違う製品を大量生産していることがあります。
この場合は、製品ごとに別々に原価を計算しなければなりません。
そこで使われるのが「組別総合原価計算」といいます。

「組」とは、製品の種類のことです。
ダイニングテーブルがA組・ローテーブルがB組であれば、同じ生産ラインであっても、組ごとに原価を計算する必要があります。

組別総合原価計算の手続き

組別総合原価計算では、原価を各製品ごとに発生する「組直接費」と共通して発生する「組間接費」に分けて計算します。

「組直接費」に分類される

• 直接材料費
• 直接労務費
• 直接経費

は、どの組にいくらかかったかが明らかですね。
これらは、各組の製品にそのまま賦課します。

一方、製造間接費にあたる「組間接費」は、どの組にいくらかかったかが明らかではありません。
そのため、適切な配賦基準によって、各組製品に賦課します。

生産データ

	A組製品	B組製品
月初仕掛品	50個 （加工進捗度：80％）	50個 （加工進捗度：60％）
当月投入	190個	75個
合計	240個	125個

	A組製品	B組製品
月末仕掛品	40個 （加工進捗度：50％）	25個 （加工進捗度：80％）
完成品	200個	100個
直接作業時間	60時間	40時間

製造原価データ

		A組製品	B組製品
月初仕掛品	直接材料費	5,930円	6,850円
	加工費	4,100円	4,600円
当月投入	直接材料費	25,270円	11,275円
	加工費	50,000円

• 直接材料は、工程の始点で投入している。
• 組間接費は、直接作業時間により配賦する。
• 原価の計算は、平均法による。

当月投入の加工費50,000円が組間接費ですね。
配賦基準の直接作業時間によるA組製品・B組製品に配賦すると、

【A組製品】
50,000円 × 60時間 / （60時間 + 40時間）
＝ 50,000円 × 60時間 / 100時間
＝ 30,000円

【B組製品】
50,000円 × 40時間 / （60時間 + 40時間）
＝ 50,000円 × 40時間 / 100時間
＝ 20,000円

となります。

組間接費が各組製品に配賦できたら、あとは単純総合原価計算と同じ手順です。

まず、A組製品から計算してみましょう。

直接材料費の平均単価は、

【平均単価】
（5,930円 + 27,670円） / （50個 + 190個）
＝ 33,600円 / 240個
＝ @140円

ですね。

月末仕掛品原価は、

【月末仕掛品原価】
＠140円 × 40個
＝ 5,600円

であり、差額の完成品原価は、

【完成品原価】
5,930円 + 27,670円 – 5,600円
＝ 28,000円

となります。

これをまとめると、以下の通りです。

加工費は、

【月初仕掛品】
50個 × 80％
＝ 40個

【月末仕掛品】
40個 × 50％
＝ 20個

【当月投入】
200個 + 20個 – 40個
＝ 180個

ですね。

平均単価が

【平均単価】
（4,100円 + 30,000円） / （40個 + 180個）
＝ 34,100円 / 220個
＝ @155円

なので、月末仕掛品原価が

【月末仕掛品原価】
@155円 × 20個
＝ 3,100円

であり、差額の完成品原価は、

【完成品原価】
4,100円 + 30,000円 – 3,100円
＝ 31,000円

となります。

これをまとめると、以下の通りです。

直接材料費と加工費を合算して、A組製品の

• 月末仕掛品原価
• 完成品原価
• 完成品単位原価

を計算します。

【月末仕掛品原価】
5,600円 + 3,100円
＝ 8,700円

【完成品原価】
28,000円 + 31,000円
＝ 59,000円

【完成品単位原価】
59,000円 / 200個
＝ @295円

次は、B組製品です。

平均単価が

【平均単価】
（6,850円 + 11,275円 ） / （50個 + 75個 ）
＝ 11,275円 / 125個
＝ @145円

ですね。

月末仕掛品原価は、

【月末仕掛品原価】
@145円 × 25個
＝ 3,625円

であり、差額の完成品原価は、

【完成品原価】
6,850円 + 11,275円 – 3,625円
＝ 14,500円

となります。

これをまとめると、以下の通りです。

加工費は、

【月初仕掛品】
50個 × 60％
＝ 30個

【月末仕掛品】
25個 × 80％
＝ 20個

【当月投入】
100個 + 20個 – 30個
＝ 90個

ですね。

平均単価が

【平均単価】
（4,600円 + 20,000円） / （30個 + 90個）
＝ 24,600円 / 120個
＝ @205円

なので、月末仕掛品原価が

【月末仕掛品原価】
@205円 × 20個
＝ 4,100円

であり、差額の完成品原価は、

【完成品原価】
4,600円 + 20,000円 – 4,100円
＝ 20,500円

となります。

これをまとめると、以下の通りです。

直接材料費と加工費を合算して、B組製品の

• 月末仕掛品原価
• 完成品原価
• 完成品単位原価

を計算します。

【月末仕掛品原価】
3,625円 + 4,100円
＝ 7,725円

【完成品原価】
14,500円 + 20,500円
＝ 35,000円

【完成品単位原価】
35,000円 / 100個
＝ @350円

最後に

小難しい用語がいくつか出てきましたが、漢字の意味そのままなので、そこまで身構える必要はありません。

次回以降も総合原価計算の内容が続くので、、ぜひ読み込んで解き方を覚えていってください。
丸暗記してしまうレベルまで読み込んで、得意分野にしていきましょう！