商品売買における三分法とは?返品があったときの仕訳はどうなる?【簿記3級 入門講座】

【簿記3級】商品売買とは?
はりねずみ

商品売買における三分法について、勉強しましょう。

目次

簿記の基本ルール:5つの要素と借方・貸方

簿記の取引は、「資産」「負債」「純資産」「費用」「収益」という5つの要素の増減・発生によって記録されます。

貸借対照表(B/S)
損益計算書(P/L)

それぞれの要素がどのように変化したかによって、仕訳の借方(左側)と貸方(右側)どちらに記入するかが決まっています。

  • 資産の増加:借方
  • 負債の増加:貸方
  • 純資産の増加:貸方
  • 費用の発生:借方
  • 収益の発生:貸方
資産が増えたとき
資産が減ったとき
負債が増えたとき
負債が減ったとき
資本(純資産)が増えたとき
資本(純資産)が減ったとき
費用が増えたとき
費用が減ったとき
収益が増えたとき
収益が減ったとき

これらの基本ルールは、商品売買だけでなく、簿記全体の仕訳の基礎となります。

例えば、

事務用として使う建物を500万円で購入し、代金を来月末に支払うこととした。

という場合、建物という資産が増加するので借方に「建物 500万円」、代金を支払う義務である未払金という負債が増加するので貸方に「未払金 500万円」と仕訳します。
ここで「未払金」を使うのは、取引の対象が商品ではないからです。

借方貸方
建物5,000,000未払金5,000,000

「建物」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。

資産が増えたとき
貸借対照表(B/S)

「未払金」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。

負債が増えたとき
貸借対照表(B/S)

簿記学習のメイン「三分法」

三分法では、商品に関する取引を記録するために、主に「仕入」「売上」「繰越商品」という3つの勘定科目を用います。

商品を仕入れたとき

仕入勘定(費用)を借方に使用します。

2,000円の商品を掛けで仕入れた。

という場合、仕訳は以下の通りです。

借方貸方
仕入2,000買掛金2,000

「仕入」は、費用の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。

費用が増えたとき
損益計算書(P/L)

「買掛金」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。

負債が増えたとき
貸借対照表(B/S)


商品を仕入れて資産が増加したにも関わらず、費用である仕入を使う点が特徴です。

商品を販売したとき

売上勘定(収益)を貸方に使用します。

このとき、仕訳に使う金額は売価(販売価格)であることを覚えておいてください。

5,000円で仕入れた商品を6,000円で掛け販売した。

という場合、仕訳は以下の通りです。

借方貸方
売掛金6,000売上6,000

商品を販売して資産が減少したにも関わらず、収益である売上を使う点が特徴です。

「売掛金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。

資産が増えたとき
貸借対照表(B/S)

「売上」は、収益の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。

収益が増えたとき
損益計算書(P/L)

繰越商品

この勘定科目は、期中の日常的な仕訳では使用せず、主に決算整理で用いられます。
資産に分類される勘定科目です。

三分法を用いるメリット・デメリット

三分法を用いるメリット

三分法を用いるメリットは、普段の仕訳が非常に簡単であることです。

商品を仕入れたとき・売ったときの単価や儲けを気にせず、仕入と売上を単価や売価で記録していけば良いですね。

三分法を用いるデメリット

三分法を用いるデメリットは、普段の仕訳を見ただけでは、商品がいくらで仕入れられていくらで売れたのか、つまり儲けがいくらなのかがわからないことです。

そのため、儲け(売上総利益)を計算するためには、決算時に別途作業が必要になります。

商品売買の処理方法にはいくつかありますが、簿記3級で主に学習するのは三分法です。
ただし、三分法をより深く理解するためには、比較対象となる分記法を知っておくことも有効です。

比較対象として知っておきたい「分記法」

分岐法は、商品を売った時に、その商品の「仕入れ値」と「儲け」を分けて記録する方法です。
主に「商品」「商品売買益」という勘定科目を用います。

商品を仕入れたとき

「商品」という資産の増加として、借方に記入します。

2,000円の商品を掛けで仕入れた。

借方貸方
商品2,000買掛金2,000

「商品」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。

資産が増えたとき
貸借対照表(B/S)

「買掛金」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。

負債が増えたとき
貸借対照表(B/S)

商品を販売したとき

商品という資産の減少を貸方に・売掛金などの資産の増加を借方に記入し、同時に「商品売却益」を収益として貸方に記入します。

5,000円で仕入れた商品を6,000円で掛け販売した。

借方貸方
売掛金6,000商品
商品売却益
5,000
1,000

「売掛金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。

資産が増えたとき
貸借対照表(B/S)

「商品」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションの反対側である貸方(右側)に記入します。

資産が減ったとき
貸借対照表(B/S)

「商品売却益」は、収益の勘定科目です。

今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。

収益が増えたとき
損益計算書(P/L)

分記法を用いるメリット・デメリット

分記法を用いるメリット

分記法を用いるメリットは、商品を売るたびに儲け(商品売買益)がすぐにわかることです。

分記法を用いるデメリット

分記法を用いるデメリットは、商品を売ったときに、その商品の仕入れ値を一つ一つ確認しなければならないため、取り扱う商品が多かったり、取引量が多かったりする企業では非常に煩雑で実務的ではないということです。

そのため、実務ではほとんどの企業が三分法を用いています。

商品の取引に関連して発生する運送費や手数料は、どう処理する?

商品取引に関連して発生する運送費や手数料などを「付随費用」といいます。
この付随費用は、それが仕入にかかるものか売上にかかるものか、どちらが負担する契約になっているかで処理が異なります。

買い手が商品を取得するのにかかった費用を負担する場合

商品を取得するためにかかった費用は、その商品の取得原価に含めて計算します

そのため、買主が負担する仕入諸掛りは、仕入勘定に含めて処理します。

1,000円の商品を仕入れ、送料100円とともに現金で支払った。

借方貸方
仕入1,100現金1,100

「仕入」は、費用の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。

費用が増えたとき
損益計算書(P/L)

「買掛金」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。

負債が増えたとき
貸借対照表(B/S)

送料100円を別途「発送費」などの費用とはしない点がポイントです。

売り手が商品を販売するのにかかった費用を負担する場合

商品を販売するのにかかった費用は、費用として別途処理します

2,000円の商品を掛けで販売し、送料200円は現金で支払った。

借方貸方
売掛金
発送費
2,000
200
売上
現金
2,000
200

「売掛金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。

資産が増えたとき
貸借対照表(B/S)

「発送費」は、費用の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。

費用が増えたとき
損益計算書(P/L)

「売上」は、収益の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。

収益が増えたとき
損益計算書(P/L)

「現金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションと反対側である貸方(右側)に記入します。

資産が減ったとき
貸借対照表(B/S)

これは、商品売買と運送契約は別々の取引であるという考え方に基づいています。
仕入時の付随費用を仕入に含めるのは、取得原価に含めるという簿記特有の考え方によるものであり、売上時は原則通り取引を分けて処理するのです。

商品を返品したとき・されたとき

仕入れた商品や販売した商品に品違いや破損などがあった場合、返品や値引きが行われることがあります。
このような場合、原則として元の仕訳の反対仕訳を行うことで処理します。

仕入れた商品を返品したとき

仕入れた商品を返品したときは、その分だけ元の仕訳の反対仕訳を行います。

2,000円の商品を掛けで仕入れた。

借方貸方
仕入2,000買掛金2,000

「仕入」は、費用の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。

費用が増えたとき
損益計算書(P/L)

「買掛金」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。

負債が増えたとき
貸借対照表(B/S)

▼ ▼ ▼

先に仕入れた商品2,000円のうち、品違いにより500円分を返品した。

借方貸方
買掛金500仕入500

「買掛金」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションの反対側である借方(左側)に記入します。

負債が減ったとき
貸借対照表(B/S)

「仕入」は、費用の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションの反対側である貸方(右側)に記入します。

費用が増えたとき
損益計算書(P/L)

販売した商品が返品されたとき

販売した商品が返品されたときは、その分だけ元の仕訳の反対仕訳を行います。

3,000円の商品を掛けで販売した。

借方貸方
売掛金3,000売上3,000

「売掛金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。

資産が増えたとき
貸借対照表(B/S)

「売上」は、収益の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。

収益が増えたとき
損益計算書(P/L)

▼ ▼ ▼

先に仕入れた商品3,000円のうち、品違いにより500円分を返品した。

借方貸方
売上500売掛金500

「売上」は、収益の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションの反対側である借方(左側)に記入します。

収益が減ったとき
損益計算書(P/L)

「売掛金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションの反対側である貸方(右側)に記入します。

資産が減ったとき
貸借対照表(B/S)
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