
商品売買における三分法について、勉強しましょう。
簿記の基本ルール:5つの要素と借方・貸方
簿記の取引は、「資産」「負債」「純資産」「費用」「収益」という5つの要素の増減・発生によって記録されます。




それぞれの要素がどのように変化したかによって、仕訳の借方(左側)と貸方(右側)どちらに記入するかが決まっています。
- 資産の増加:借方
- 負債の増加:貸方
- 純資産の増加:貸方
- 費用の発生:借方
- 収益の発生:貸方




















これらの基本ルールは、商品売買だけでなく、簿記全体の仕訳の基礎となります。
例えば、
事務用として使う建物を500万円で購入し、代金を来月末に支払うこととした。
という場合、建物という資産が増加するので借方に「建物 500万円」、代金を支払う義務である未払金という負債が増加するので貸方に「未払金 500万円」と仕訳します。
ここで「未払金」を使うのは、取引の対象が商品ではないからです。
借方 | 貸方 | ||
建物 | 5,000,000 | 未払金 | 5,000,000 |
「建物」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「未払金」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




簿記学習のメイン「三分法」
商品を仕入れたとき
2,000円の商品を掛けで仕入れた。
という場合、仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
仕入 | 2,000 | 買掛金 | 2,000 |
「仕入」は、費用の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「買掛金」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




商品を仕入れて資産が増加したにも関わらず、費用である仕入を使う点が特徴です。
商品を販売したとき
このとき、仕訳に使う金額は売価(販売価格)であることを覚えておいてください。
5,000円で仕入れた商品を6,000円で掛け販売した。
という場合、仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
売掛金 | 6,000 | 売上 | 6,000 |
商品を販売して資産が減少したにも関わらず、収益である売上を使う点が特徴です。
「売掛金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「売上」は、収益の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




繰越商品
三分法を用いるメリット・デメリット
三分法を用いるメリット
商品を仕入れたとき・売ったときの単価や儲けを気にせず、仕入と売上を単価や売価で記録していけば良いですね。
三分法を用いるデメリット
そのため、儲け(売上総利益)を計算するためには、決算時に別途作業が必要になります。
商品売買の処理方法にはいくつかありますが、簿記3級で主に学習するのは三分法です。
ただし、三分法をより深く理解するためには、比較対象となる分記法を知っておくことも有効です。
比較対象として知っておきたい「分記法」
商品を仕入れたとき
2,000円の商品を掛けで仕入れた。
借方 | 貸方 | ||
商品 | 2,000 | 買掛金 | 2,000 |
「商品」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「買掛金」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




商品を販売したとき
5,000円で仕入れた商品を6,000円で掛け販売した。
借方 | 貸方 | ||
売掛金 | 6,000 | 商品 商品売却益 | 5,000 1,000 |
「売掛金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「商品」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションの反対側である貸方(右側)に記入します。




「商品売却益」は、収益の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




分記法を用いるメリット・デメリット
分記法を用いるメリット
分記法を用いるデメリット
そのため、実務ではほとんどの企業が三分法を用いています。
商品の取引に関連して発生する運送費や手数料は、どう処理する?
買い手が商品を取得するのにかかった費用を負担する場合
そのため、買主が負担する仕入諸掛りは、仕入勘定に含めて処理します。
1,000円の商品を仕入れ、送料100円とともに現金で支払った。
借方 | 貸方 | ||
仕入 | 1,100 | 現金 | 1,100 |
「仕入」は、費用の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「買掛金」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




送料100円を別途「発送費」などの費用とはしない点がポイントです。
売り手が商品を販売するのにかかった費用を負担する場合
2,000円の商品を掛けで販売し、送料200円は現金で支払った。
借方 | 貸方 | ||
売掛金 発送費 | 2,000 200 | 売上 現金 | 2,000 200 |
「売掛金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「発送費」は、費用の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「売上」は、収益の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




「現金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションと反対側である貸方(右側)に記入します。




これは、商品売買と運送契約は別々の取引であるという考え方に基づいています。
仕入時の付随費用を仕入に含めるのは、取得原価に含めるという簿記特有の考え方によるものであり、売上時は原則通り取引を分けて処理するのです。
商品を返品したとき・されたとき
仕入れた商品を返品したとき
2,000円の商品を掛けで仕入れた。
借方 | 貸方 | ||
仕入 | 2,000 | 買掛金 | 2,000 |
「仕入」は、費用の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「買掛金」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




▼ ▼ ▼
先に仕入れた商品2,000円のうち、品違いにより500円分を返品した。
借方 | 貸方 | ||
買掛金 | 500 | 仕入 | 500 |
「買掛金」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションの反対側である借方(左側)に記入します。




「仕入」は、費用の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションの反対側である貸方(右側)に記入します。




販売した商品が返品されたとき
3,000円の商品を掛けで販売した。
借方 | 貸方 | ||
売掛金 | 3,000 | 売上 | 3,000 |
「売掛金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「売上」は、収益の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




▼ ▼ ▼
先に仕入れた商品3,000円のうち、品違いにより500円分を返品した。
借方 | 貸方 | ||
売上 | 500 | 売掛金 | 500 |
「売上」は、収益の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションの反対側である借方(左側)に記入します。




「売掛金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションの反対側である貸方(右側)に記入します。



