
「資本(純資産)」に分類される勘定科目について、勉強しましょう。
簿記3級における資本(純資産)とは?
簿記3級における資本(純資産)の勘定科目は?
会社の設立と資本金
株主は会社に出資した人であり、会社の所有者という立場になります。
株主は株主総会に参加して意見を述べたり、配当金を受け取ったりする権利を持ち、会社法的には社長よりも偉い存在とみなされます。
株式会社の設立に際して株式を発行し、投資家からお金が払い込まれた場合、そのお金は簿記上、貸方「資本金」として処理されます。
1万株を1株¥500で発行し、全額を当座預金に払い込みを受けた。
という場合であれば、仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
当座預金 | 5,000,000 | 資本金 | 5,000,000 |
「当座預金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「資本金」は、資本(純資産)の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




会社設立後、さらに資金が必要になった場合に、株式を追加で発行して資金を調達することを増資といいます。
増資によって払い込まれたお金も、同様に貸方「資本金」として処理されます。
設立から3年後に、5,000株を1株¥700で発行し、全額を当座預金に払い込みを受けた。
という場合であれば、仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
当座預金 | 3,500,000 | 資本金 | 3,500,000 |
「当座預金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「資本金」は、資本(純資産)の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




資本金の意味
資本金として払い込まれたお金は、設立後や増資後に様々な事業活動(工場建設、機械購入など)に使われていくため、資本金勘定の金額がそのまま手元の現金として残っているわけではありません。
では、資本金とは何を示すのかというと、それは「今まで株主から払い込まれた金額の累積値」です。
つまり、その会社が設立以来、株主からの出資によってどれだけの資金を集めたかを示すものであり、企業の規模を測る目安となる値です。
資本金の金額がお金の残高を示すわけではないという点は、しばしば誤解されやすいようです。
繰越利益剰余金とは?
これは、損益計算書で計算される純利益(収益合計から費用合計を差し引いたもの)に基づいて算出されます。
会計年度の終わりに、その期間の収益勘定と費用勘定の残高をゼロにするために、一度「損益」という勘定に振り替えます。
例えば、収益合計が5,000万円、費用合計が3,000万円だった場合、差額の1,000万円が純利益となります。
収益合計 | 5,000万円 | 純利益 | 費用合計3,000万円 2,000万円 |
この純利益1,000万円は、損益勘定の貸方残高となります。
この損益勘定の残高(純利益)を、最後に「繰越利益剰余金」という純資産の勘定に振り替えます。
仕訳は、以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
損益 | 20,000,000 | 繰越利益剰余金 | 20,000,000 |
これにより、当期の利益が繰越利益剰余金に積み立てられることになります。
もし、翌年も利益が出た場合、同様の仕訳によってその利益も繰越利益剰余金に累積されていきます。
したがって、繰越利益剰余金の残高は、過去の利益の累積額を示すことになります。
資本金と同様、繰越利益剰余金も目に見える姿形があるわけではなく、債権でも債務でもありません。
利益準備金とは?
会社法によって繰越利益剰余金のうち500万円を利益準備金にしなさいという場合には、
借方 | 貸方 | ||
繰越利益剰余金 | 5,000,000 | 利益準備金 | 5,000,000 |
という仕訳になります。
この仕訳は、繰越利益剰余金という名前の純資産項目を減らし、代わりに利益準備金という名前の純資産項目を増やすものであり、簿記上は「名前の変更」のようなものです。
この振り替えを行う理由は会社法にあり、簿記3級のレベルでは、会社法で定められているからこのように処理すると理解すれば十分です。
利益準備金の詳細は、剰余金の配当の箇所で解説していきます。
資金調達方法の違い
銀行借入は負債であり、金融機関に対して返済義務があります(勘定科目は借入金)。
借り入れた資金に対して利息を支払う必要があります。
銀行は会社の株主総会には参加せず、基本的には経営に直接口出ししません。
株式発行は純資産であり、株主に対して返済義務はありません。
利息の支払いはなく、会社の利益が出た場合に株主に対して配当金を支払うことがありますが、これは義務ではありません(配当がない場合もあります)。
株式発行によって資金を提供した株主は、会社の所有者として株主総会に参加し、経営に口出しすることができます。
簿記上、この2つの方法の最も大きな違いは、銀行借入が負債として扱われるのに対し、株式発行は純資産として扱われる点です。