
税金が絡む仕訳について、解説していきます!
簿記3級の学習範囲には「税金」が含まれます。
税金と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、簿記3級で問われるのは基本的な処理方法です。
この記事では、簿記3級で学ぶ主要な税金(消費税、法人税等、固定資産税、印紙税)について、その仕組みや仕訳、計算方法を分かりやすく解説します。
この記事を読めば、税金に関する簿記の論点がすっきりと理解できるはずです。
独学での合格を目指す皆さん、ぜひ最後までお読みください!
簿記3級で学ぶ主要な税金の種類
日本には多くの税金がありますが、簿記3級で主に学習するのは以下の税金です。
消費税
モノの購入や消費にかかる税金
法人税等
法人(会社)の儲け(利益)にかかる税金で、法人税、住民税、事業税をまとめたもの
固定資産税
土地や建物などの固定資産を持っていることにかかる税金
印紙税
特定の契約書や領収書などに貼る収入印紙にかかる税金
これらのうち、特に消費税と法人税等が簿記3級で重要な論点となります。
簿記3級の重要論点①:消費税の会計処理
消費税は、私たちが普段の生活で最も身近に感じる税金です。
税金を最終的に負担する人(消費者)と、税金を国などに納める人(事業者)が異なる間接税であり、簿記3級では、会社側(事業者)の立場で消費税の会計処理を学びます。
消費税の仕組みと期中取引の仕訳
会社は、商品を販売した際に消費者から消費税を受け取り、商品を仕入れた際に相手に消費税を支払います。
期中は、この受け取りと支払いを区別して記録します。
受け取った消費税は、将来税務署に納める義務があるお金です。
一時的に預かっている性格を持つため、「仮受消費税」という勘定科目(負債)で処理します。
売上高に含めてはいけません。
商品を税抜300円で販売し、消費税30円(税率10%と仮定)を含めた330円を後日受け取ることとした。
という場合、仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
売掛金 | 330 | 売上 仮受消費税 | 300 30 |
「売掛金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「売上」は、収益の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




「仮受消費税」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




支払った消費税:は、将来、受け取った消費税から差し引くことができるお金です。
将来の納税額を計算する上で重要になるため、「仮払消費税」という勘定科目(資産)で処理します。
仕入などの費用に含めてはいけません。
商品を税抜200円で仕入れ、消費税20円(税率10%と仮定)を含めた220円を後日支払うこととした。
という場合、仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
仕入 仮払消費税 | 200 20 | 買掛金 | 220 |
「仕入」は、費用の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「仮払消費税」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「買掛金」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




商品取引以外でも、備品購入などで消費税は発生し、同様に仮払消費税として処理します。
期中はこれらの取引が繰り返され、仮受消費税と仮払消費税が日々計上されていきます。
消費税の決算整理仕訳と納税
1年間を通じて計上された仮受消費税と仮払消費税は、決算整理仕訳で整理します。
受け取った消費税の合計(仮受消費税の残高)から、支払った消費税の合計(仮払消費税の残高)を差し引いた差額が、会社が税務署に納めるべき消費税の金額となります。
1年間の仮受消費税の合計が600万円、仮払消費税の合計が500万円だった。
という場合、仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
仮受消費税 | 6,000,000 | 仮払消費税 未払消費税 | 5,000,000 1,000,000 |
「仮受消費税」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションの反対側である借方(左側)に記入します。




「仮払消費税」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションの反対側である貸方(右側)に記入します。




「未払消費税」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




この仕訳により、仮受消費税(負債)は借方に記入されてゼロに、仮払消費税(資産)は貸方に記入されてゼロになります。
そして、納税すべき差額(600万円 – 500万円 = 200万円)が、「未払消費税」という勘定科目(負債)として計上されます。
これは、まだ支払っていないが支払う義務がある状態です。
この仕訳は、決算日(例えば3月31日)に行われます。
後日、未払消費税として計上した税金を実際に納税する際には、以下の仕訳を行います。
未払消費税100万円を小切手を振り出して支払った。
「未払消費税」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションの反対側である借方(左側)に記入します。




「当座預金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションと反対側である貸方(右側)に記入します。




簿記3級の重要論点②:法人税等の会計処理
法人税等は、法人(会社)が1年間で得た利益に対して課される税金です。
具体的には、法人税、住民税、事業税の3つをまとめて「法人税等」として処理します。
法人税等の計算と決算整理仕訳・納税
法人税等の金額は、会社の税引前当期純利益に基づいて計算されます。
税引前当期純利益とは、収益から全ての費用を差し引いた、税金を計算する前の段階の利益のことです。
簿記3級では、この利益に税率を掛けて税額を計算します。
税引前当期純利益が100万円で、法人税等の税率が40%の場合
100万円 × 40% = 40万円
この計算された法人税等についても、決算で仕訳を行います。
計算された法人税等が40万円だった場合(中間納付はなかったとする)
借方 | 貸方 | ||
法人税等 | 400,000 | 未払法人税等 | 400,000 |
「法人税等」は、費用の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「未払法人税等」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




借方の「法人税等」は、厳密には費用ではありませんが、簿記3級では費用のように考えて構いません。
貸方の「未払法人税等」は、まだ税金を納めていないため、負債として計上されます。
この仕訳も決算日に行われる決算整理仕訳です。
法人税等は、通常、決算日から2ヶ月以内に納税します。
未払法人税等40万円を小切手を振り出して支払った。
借方 | 貸方 | ||
未払法人税等 | 400,000 | 当座預金 | 400,000 |
「未払法人税等」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションの反対側である借方(左側)に記入します。




「当座預金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションと反対側である貸方(右側)に記入します。




法人税等の中間納付の仕組みと仕訳
法人税等には、期の途中(事業年度開始から6ヶ月経過後から2ヶ月以内)に、暫定的な税額を事前に納める中間納付という制度があります。
暫定額は前年度の法人税等の半額などで計算されることが多いです。
中間納付で支払った税金は、まだ最終的な税額が確定していないため、費用ではなく「仮払法人税等」という勘定科目(資産)で処理します。
中間納付として60万円を小切手を振り出して支払った。
借方 | 貸方 | ||
仮払法人税等 | 600,000 | 当座預金 | 600,000 |
「仮払法人税等」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「当座預金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションと反対側である貸方(右側)に記入します。




そして、決算で最終的な法人税等の金額が確定した際に、この仮払法人税等を精算します。
当年度の法人税等が110万円だった(期中の中間納付60万円あり)。
借方 | 貸方 | ||
法人税等 | 1,100,000 | 仮払消費税等 未払消費税等 | 600,000 500,000 |
「法人税等」は、費用の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「仮払法人税等」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションと反対側である貸方(右側)に記入します。




「未払法人税等」は、負債の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションである貸方(右側)に記入します。




最終的な税額(110万円)から、すでに支払った中間納付額(60万円)を差し引いた50万円が、新たに納税が必要な未払法人税等(負債)となります。
中間納付がある場合の決算整理仕訳では、仮払法人税等を消し込む点を忘れないようにしましょう。
その他の税金(固定資産税、印紙税、不動産取得税)の会計処理
簿記3級では、消費税や法人税等の他にも、いくつかの税金が出てきます。
これらの税金は、原則として費用として処理されます3。
固定資産税、印紙税、不動産取得税の仕訳
固定資産税は、土地や建物などの固定資産を所有していることにかかる税金です。
この税金は、「租税公課(そぜいこうか)」という勘定科目(費用)で処理します。
固定資産税100万円を当座預金から支払った。
借方 | 貸方 | ||
租税公課 | 1,000,000 | 当座預金 | 1,000,000 |
「租税公課」は、費用の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「当座預金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションと反対側である貸方(右側)に記入します。




印紙税は、特定の書類作成に必要な収入印紙にかかる税金です。
収入印紙の購入代金も、原則として「租税公課」という勘定科目(費用)で処理します。
500円の収入印紙を現金で購入した。
借方 | 貸方 | ||
租税公課 | 500 | 現金 | 500 |
「租税公課」は、費用の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「現金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションと反対側である貸方(右側)に記入します。




不動産取得税は、不動産を取得した際に一度だけかかる税金です。
この税金の処理については、取得した資産(土地など)の取得原価に含めるのが原則的な会計処理と考えられています。
これは、資産の取得にかかった付随費用を取得原価に含めるという会計のルールに基づいています。
土地購入にあたり、不動産取得税30万円を普通預金から支払った(取得原価に含める場合)。
借方 | 貸方 | ||
土地 | 300,000 | 普通預金 | 300,000 |
「土地」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが増えているため、ホームポジションである借方(左側)に記入します。




「普通預金」は、資産の勘定科目です。
今回は、これが減っているため、ホームポジションと反対側である貸方(右側)に記入します。




ただし、実務上は「租税公課」として費用処理される場合もあります。
試験では、問題文に処理方法の指示があればそれに従い、指示がなければ原則通り取得原価に含める処理で解答するようにしましょう。
まとめ
簿記3級で学習する税金は、その種類によって会計処理が異なります。
特に、消費税は仮払・仮受・未払、法人税等は法人税等・未払法人税等・仮払法人税等といった勘定科目と、決算整理仕訳や中間納付といった固有の仕組みがあります。
固定資産税や印紙税は原則として租税公課(費用)で処理し、不動産取得税は原則として取得資産の取得原価に含める処理を行います。
これらの税金に関する仕訳パターンをしっかりと理解し、繰り返し練習することが簿記3級合格への近道です。
ぜひ仕訳問題を解いて理解を深めていきましょう。